パッケージデザインのプロが教える!印刷・加工の基礎知識
目次
1.【素材の選定】ブランドの「格」と「機能」を左右する土台
パッケージ制作の第一歩は、素材選びから始まります。素材は視覚だけでなく「触覚」を通じてブランドの価値観を伝えるため、コスト、耐久性、そして「質感」のバランスを見極めることが不可欠です。
1-1. 紙素材と環境配慮の潮流
現代のパッケージにおいて、環境への配慮は「選ばれる理由」に直結します。
- FSC認証紙・バガス紙: 森林管理の認証を受けた紙や、サトウキビの搾りかすをリサイクルした素材です。植物性100%のお香の事例では、商品の「環境への優しさ」を体現するため、これらの素材が採用されました。
- 【関連実績】植物性100%「お香・お線香」環境配慮のパッケージデザイン
https://www.gride.biz/works/2376/
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- 質感による差別化: 手触り感のあるざらついた紙で素朴さを出したり、アルミ素材で高級感や未来感を演出したりと、素材そのものがブランドストーリーを語ります。
1-2. 耐久性と機能性の追求
特に食品や通販商品では、保存性や配送時の強度が重要です。
- 冷凍・冷蔵への対応: 馬刺しの小売事業支援では、発泡スチロールからダンボール箱への切り替えを検証しました。クール宅急便の品質向上を背景に、耐久性のあるダンボールに耐水性のある表面加工を施すことで、コスト削減と環境負荷低減、そして高級感の両立を実現しています。
- 【関連実績】小売事業(店頭・通販)のパッケージデザインとブランディング支援
https://www.gride.biz/works/3108/
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- ガスバリア性: 米粉サブレ「たかむすび」の個包装では、湿気の透過を防ぐ素材を選定し、お菓子の美味しさを守る設計を行っています。
- 【関連実績】パッケージデザインで挑む!
- 米粉サブレのお土産戦略
https://www.gride.biz/works/2578/
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2.【印刷と情報のレイアウト】「伝わる」ための正確な設計
素材が決まったら、次は情報をどのように定着させるかという「印刷」の工程です。画面上のデザインが美しくても、印刷後の視認性や法的な正確さが欠けていては、プロの仕事とは言えません。
2-1. 印刷用データの基本
- Adobe Illustrator形式: 原則として、印刷にそのまま回せる入稿用データ一式(アウトライン済みデータ、リンク画像、仕様書など)で管理されます。
- 色数のコントロール: 予算を抑えつつ上質感を出すために、あえて印刷の色数を絞り、その分を上質な紙素材のコストに充てるという戦略も有効です。
2-2. 義務表示とバーコードの重要性
パッケージの裏面や側面は、法律で義務付けられた重要な情報の宝庫です。
- 一括表示のレイアウト: 原材料名や栄養成分などは、美観を損ねやすい部分ですが、正確な情報の「翻訳」が必要です。限られたスペースで読みやすさを確保する「情報レイアウト」が求められます。
- 法的チェック: 薬機法や景表法、食品表示法などに基づいたアドバイスを初期段階で行い、法的なハードルを円滑にクリアするためのサポートが重要です 。
2-3. 写真(シズル感)の力
食品パッケージにおいて、写真は命です。
- シズル表現: 専門のフォトグラファーやフードスタイリストと連携し、光の当たり方や水滴一つに至るまで、デザインコンセプトに合わせてディレクションします。
- レタッチ技術: 自社内での高度な画像合成・加工により、消費者の「美味しそう」という本能に訴えかけるビジュアルを作り上げます。
3.【特殊加工と構造設計】五感に響くプレミアムな演出
競合商品がひしめく棚で「指名買い」されるためには、標準的な印刷を超えた「驚き」や「満足感」が必要です。ここで威力を発揮するのが、特殊加工と構造(形状)の設計です。
3-1. 視覚と触覚に訴える特殊加工
特殊加工は、商品のプレミアム感を劇的に高め、競合との明確な差別化を可能にします。
| 加工方法 | 特徴と効果 | 活用事例 |
| 箔押し(ホットスタンピング) | 金属光沢を与え、圧倒的な高級感を演出。印刷インクより耐久性にも優れる。 | 高級歯ブラシのパッケージで、ヘッドの特長を強調し、ワンランク上の付加価値を訴求。 |
| エンボス加工(型押し) | 紙に凹凸をつけ、触感に訴えかける。色数を抑えても上質さを出せるため、コスト効率も良い。 | 植物性100%のお香パッケージ。清潔感とスピリチュアルな世界観を、シンプルな凹凸で表現。 |
| PP /ビニール引き | 表面にしっとりとした質感を与え、反射を抑えるマット加工。鮮やかな光沢感がでて、発色が濃く感じられグロス加工。耐水性や耐久性も向上する。 | 馬刺しギフトの箱や、米粉サブレのパッケージに採用。手に取った瞬間の「温もり」や「期待感」を創出。 |
3-2. 形状開発(構造設計)の挑戦
パッケージは立体物であり、その形状自体が強力なメッセージになります。
- ユーザー体験(UX)の設計: 開けやすさ、持ちやすさ、そして「開封する瞬間の高揚感」までを計算します。
- 流通と法規制の遵守: 斬新な形を追求する一方で、輸送効率や「空間容積率(外装サイズに対する中身の割合)」といった法規制もクリアしなければなりません。
- 試作(ダミー制作)の徹底: 画面上ではわからないロゴのサイズ感や、容器としての持ちやすさを確認するため、実寸大のダミーを制作し、精度を極限まで高めます。
4. 【パッケージ・ブランディング】売上を最大化する投資
最後に、印刷・加工の知識をどのように「利益」に結びつけるかを考えます。パッケージは、24時間365日休みなく働く「最強の営業マン」です。
4-1. 投資収益率(ROI)の考え方
一時的な広告費とは異なり、一度作り上げたパッケージは、商品が店頭にある限り価値を生み出し続ける「資産」です。
- 広告費ゼロでの売上増: 適切なリニューアルにより、広告をかけずに売上が1.5倍〜2倍になった事例もあります。
- 一貫したブランド体験: パッケージを核として、ロゴ、販促POP、Web、SNS、配送箱に至るまで一貫したビジュアルアイデンティティを構築することで、マーケティング投資の効率を最大化します。
4-2. グライドが提供する「伴走型」支援
グライドの「パッケージ ブランディング デザイン」は、単なる制作に留まりません。
- 戦略と形の融合: 市場での勝機を見出す「戦略」を立て、それを「形」に落とし込みます。
- トータルディレクション: 印刷会社や容器メーカーとの技術的な調整もすべて引き受けます。これにより、当初のデザインイメージを損なうことなく、最終成果物まで高いクオリティを維持できます。
- 事業課題への踏み込み: 熊本の馬刺し専門店の事例では、デザイン刷新だけでなく、煩雑だった梱包オペレーションの改善(箱のサイズ集約など)まで提案し、業務効率化にも貢献しました。
5. デザインは経営を左右する投資である
パッケージデザインにおける印刷・加工の知識は、単なる技術的なディテールではありません。それは、商品の真の価値を消費者に届けるための「翻訳技術」です。
素晴らしい商品を作っているのに、その良さが伝わっていない。あるいは、既存のパッケージが今の時代の空気感とズレてきている。もしそのようなお悩みがあれば、ぜひ一度、プロの視点を活用してみてください。
グライドは、お客様の夢と消費者の期待をパッケージという小さな箱に詰め込み、世界に一つでも多くの「売れる幸せ」を創り出していくことを使命としています。








