PACKAGE DESIGN

歯ブラシの高級感を演出するパッケージデザイン

  • 歯ブラシの高級感を演出するパッケージデザイン

強いブランドに挑む、新シリーズのパッケージデザイン

本案件では、歯ブラシの新シリーズにおけるパッケージデザインと店頭用POPシール(アテンションシール)を制作しました。依頼元は歯ブラシメーカー様で、直接のご依頼です。
当社は普段から代理店を通さず、メーカー様と直接やり取りを行うケースが多く、今回もその信頼関係をベースに進めさせていただきました。

ターゲットは、30〜50代の男性。デンタルケアへの関心が高く、ドラッグストアでの商品選択において「多少高くても良いものを買いたい」と考える層です。商品自体がやや高価格帯であるため、「お金に余裕がある人」「自己投資意識の高い人」に向けたデザイン訴求が必須でした。また、設置場所はドラッグストアの歯ブラシ売り場。多数の競合商品に埋もれず、手に取っていただけるかどうかが、選ばれるかどうかを決定づける要因となります。

既存のブランドシリーズはすでに強い地位を確立していましたが、その分「別シリーズの立ち上げ」には課題がありました。ブランドの世界観を守りつつ、上位ラインにふさわしい高付加価値を訴求する必要がありました。


ブランドを守りながら差別化を図るデザインへの期待

クライアントから最初にいただいたご要望は、すでに確立しているブランドの世界観を損なうことなく、さらに高付加価値を感じさせる新シリーズを立ち上げたいというものでした。
既存ブランドは強い支持を得ていた反面、新シリーズはその存在感に埋もれてしまう恐れがあり、どのようにして市場で差別化を図るかが大きな課題でした。

特に歯ブラシヘッドの構造に独自性があるため、その特徴をいかに視覚的に伝えられるかが重要なポイントであり、ドラッグストアという競合商品が多く並ぶ売場においては、一目で商品の良さが伝わり、消費者の手に取っていただけるようなデザインである必要があります。さらにブランドには厳格なレギュレーションがあり、文字の配置や全体の構成に制約がある中で、新しさと高級感を打ち出すことが求められました。

また、ブランドの象徴的なイメージを踏まえつつ、箔押し加工を効果的に取り入れることも要望のひとつでした。箔を使った表現は、高級感を演出すると同時に競合との差別化にもつながります。そのため、従来のデザイン資産を活かしながら、新シリーズにふさわしい洗練さをどのように加えるかが検討の焦点となりました。

最終的にクライアントが解決すべき課題は、単にデザインを一新することではなく、消費者に「既存ブランドよりも1ランク上の高付加価値商品である」と自然に感じてもらえるように仕上げることでした。さらに、その価値を補完する役割としてPOPシールを併せて制作し、店頭での情報伝達力を高めることも重要視されていました。


半年にわたる検証と50以上の試作で導いた最適解

本案件において特に大きな制約となったのは、台紙の面積が非常に限られていることでした。ブランドレギュレーションにより文字配置や表現方法にも制限があり、その範囲内でいかに高付加価値を伝え、競合との差別化を図るかが大きな課題でした。

制作の流れはおおよそ半年ほどに及び、非常に丁寧で段階的なプロセスを経ています。まず初期段階では3種類の方向性を提示し、クライアント社内での検討を重ねながらデザインの方向性を絞り込みました。その後、中間段階においては選ばれた案をブラッシュアップし、色味や質感、箔押しの使い方などを細かく調整。さらに最終段階では、50パターンを超える細かなバリエーションを用意し、配置やカラーリングの違いを比較検討しながら完成度を高めていきました。

この過程では、単に採用する可能性のある案だけでなく、検証のための「参考案」も積極的に制作しました。クライアントから「こうしたパターンも見てみたい」と依頼があれば、まず実際に形にして提示し、その上で効果や適否を説明するという進め方を徹底。こうした地道な検証を積み重ねることで、最終的にクライアントが納得し、安心して市場投入できるデザインに仕上げることができました。


3方向の提案から選ばれた、機能を伝えるデザイン

当社が最初にご提示した提案は、互いに方向性の異なる3つのデザイン案でした。クライアントからは「既存ブランドとの差別化を図りたい」との要望があったため、意図的にバリエーションの幅を持たせた内容で構成しています。

ひとつ目の案は、男性的で力強さを打ち出したデザインでした。ブラックを基調とし、シャープなラインを活かすことでターゲットである30〜50代男性に直接響く力強い印象を狙いました。ふたつ目の案は、歯ブラシヘッドをイラストで強調したデザインです。商品の最大の差別化要素であるヘッドの特長を視覚的に理解しやすくすることを重視し、購買直前の消費者に対して「この商品ならではの価値」を直感的に伝えられるよう工夫しました。そして三つ目の案は、既存ブランドの象徴であるダイヤ感を継承しながらも高級感を増幅させたデザインでした。箔押し加工を活用し、従来のブランド資産を守りながらも、上位ラインにふさわしい進化を表現しています。

最終的に選ばれたのは、歯ブラシヘッドをイラストで強調した案でした。その理由は、売場において消費者に瞬時に機能を理解してもらうことが購入の決定要因になるとクライアントが判断したためです。ただし、このイラスト案は初期の3案のひとつにすぎず、実際には箔押しの形状に強くこだわり、多様なパターンを検証しました。その結果、ブランド名を連想させる意味を持つ形状へと進化させ、高級感とブランドらしさを兼ね備えた仕上がりになりました。

また、提案の過程では実際に売場に足を運び、競合商品との並びや陳列状況を確認しました。パッケージ単体の美しさだけでなく、実際に棚に並んだ際に他商品と比較してどう映えるかをシミュレーションしながらデザインを練り上げたことも、本案件の大きな特徴となっています。


丁寧な進行が導いた評価と継続的なご依頼

新シリーズとして無事に市場投入され、既存ブランドの強さに隠れながらも確実に売場に新たな存在感を発揮しました。具体的な数値は公開できませんが、メーカー様からは「進め方が非常に丁寧で、納得感を持って最終決定ができた」と高い評価をいただきました。

また、この案件の進行過程が信頼につながり、その後もシリーズ展開の追加案件をいただいています。つまり、実績そのものが新たな実績につながった形です。メーカー様にとっても「外部の力を借りることで、自社の発想を超えるデザインが実現できた」という実感を持っていただけたようです。

パッケージは単なる「容れ物」ではなく、消費者と商品の最初の接点だと考えています。限られた数秒間で「手に取る理由」を与えられるかどうかで、売上は大きく変わります。グライドではこれからもメーカー様の想いをカタチにし、消費者に届くデザインを追求していきます。


用語解説

こちらの記事でご紹介した技術や工夫についての用語解説です。

箔押し加工
箔押し加工は一般的に「ホットスタンピング」とも呼ばれます。「金属光沢」「耐久性」「高級感」といった点が印刷インクより優れているのが特徴です。

POPシール
商品にPOPシールとして貼り付け、パッケージだけでは伝えきれない情報を補足します。

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